2018 年 40 巻 5 号 p. 367-371
脳底動脈の窓形成(fenestration)を有し,同部に脳梗塞を発症した1 例を報告した.症例は高血圧症,糖尿病および脂質異常症で加療中の74 歳男性である.呂律の回りにくさ,歩行時のふらつきを自覚し,発症1 カ月後に当科入院した.MRI で右中小脳脚に亜急性期の梗塞像を認めた.脳底動脈近位側に窓形成があり,その右動脈幹および右前下小脳動脈がアテローム血栓性に閉塞していた.頭蓋内プラークイメージングが閉塞部の不安定プラークの評価に有用であり,診断の一助となった.同部におけるアテローム血栓性脳梗塞の発症には血行力学的な要因と脳卒中危険因子が相互的に関与する可能性が考えられ,今後さらなる症例の蓄積と検討が必要である.脳底動脈窓形成例においては将来的な脳梗塞発症の可能性も念頭において経過観察する必要がある.