2019 年 41 巻 2 号 p. 111-114
要旨:交通事故で救急搬送された際に左片麻痺を認め,頭部MRI で右中大脳動脈M1 閉塞による脳梗塞と診断し,rt-PA 静注療法中に縦隔血腫を来した症例である.体幹部単純CT 検査で骨折や出血がないことを確認し,軽症の外傷と判断し,最終未発症時刻から1 時間30 分後にrt-PA 静注療法を開始した.治療開始後に前胸部痛を訴え,造影CT 検査で前縦隔に血腫を認めた.rt-PA 静注療法は中止し,脳血管内治療に変更した.右中大脳動脈は再開通しており,両側内胸動脈から造影剤の漏出を認め,コイル塞栓術を行った.軽微な外傷にみえてもrt-PA 静注療法により重篤な出血を来す可能性があり,血管損傷が疑われた場合は迅速な病態評価が求められる.