2023 年 45 巻 5 号 p. 394-400
43歳女性.仕事で当院を訪問中に心室細動により心肺停止となったが,直流除細動器により自己心拍は再開した.左室駆出率が30%へと低下していたが,冠動脈に有意狭窄を認めなかった.重度の左室低心機能と急性心不全に対して,右大腿動脈経由で胸部下行大動脈に大動脈内バルーンポンプ(IABP)が挿入されて,補助循環が開始された.頭部CTで破裂脳動脈瘤による重症SAHと診断し,たこつぼ型心筋症に伴う心機能低下と判断した.IABP駆動により循環動態は安定化しており,脳室ドレーンを挿入し,右上腕動脈アプローチでコイル塞栓術を行った.経時的に心機能の改善を認め,第3病日にIABPを抜去し,良好な転帰が得られた.重症SAHで循環動態安定化のためのIABP駆動中であっても,初回CTで致命的な脳損傷がなければ,早期の頭蓋内圧管理と再破裂予防の動脈瘤治療が良好な転帰につながるかもしれない.