脳卒中
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45 巻, 5 号
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総説
  • 廣木 昌彦, 河野 豊, 三澤 雅樹
    2023 年 45 巻 5 号 p. 369-380
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/01
    ジャーナル オープンアクセス

    最速の脳卒中治療とより良好な患者転帰を目的として,mobile stroke unit(MSU)が欧米を中心に運用されている.MSUは,頭部専用CT装置と遠隔通信装置を備えたドクターカーで,救急要請現場または救急車との合流点で,脳卒中の診断と治療および最適な搬送先決定を行う.MSUによる急性期脳梗塞rt-PA静注療法は2021年,通常救急搬送と比較した前向き試験により,有意に転帰良好であることが報告された.費用対効果の上昇も同様に明らかにされている.日本はMSUに搭載可能なCT装置が未承認であるため,MSU未導入である.今後承認されたとしても,導入および運用に関する巨額なコストなど,財政的な課題が待ち構えている.このことは,特に医療提供の低い地方部・遠隔地へのMSU導入には,大きな障壁である.本論文では,MSUの最新動向と課題解決に向けた現在開発,または検証中の車載用診断装置についてまとめた.

原著
  • 中村 理花, 堂福 翔吾, 青鹿 高志, 角替 麻里絵, 小原 健太, 佐藤 允之, 上田 雅之, 太田 貴裕
    2023 年 45 巻 5 号 p. 381-387
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/04/12
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】急性頭蓋内主幹動脈閉塞に対して,機械的血栓回収療法を施行した頚部内頚動脈解離の解離部位に対する治療選択を,後方視的に検討した.【方法】2015年4月~2022年3月に,当院で機械的血栓回収療法を行った290症例を対象に調査した.診断は臨床症状や画像所見などを総合的に判断し,後方視的に初発症状・神経所見・画像・治療法・転帰を収集した.【結果】頚部内頚動脈解離例は5例で,平均年齢47歳,55歳以下では21%(4/19例)を占め,頭頚部痛発症は2例のみであった.頚部内頚動脈解離に対しては,3例で経皮的血管拡張術を先行させ,うち1例で母血管閉塞,1例で1カ月後に頚部ステント留置術施行,保存加療2例を含め,いずれも治療後に症状の改善を得た.【結語】頚部内頚動脈解離は,若年重症脳卒中の原因疾患として多く,疼痛の訴えがなくても鑑別に挙げる必要があり,個々の症例に応じた治療介入が必要と考えられた.

症例報告
  • 沖野 礼一, 坂田 純一, 藤田 敦史, 芝野 綾香, 原田 知明, 山本 大輔, 濵口 浩敏, 三宅 茂
    2023 年 45 巻 5 号 p. 388-393
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    鎖骨下動脈狭窄症は,上肢の虚血症状や鎖骨下動脈盗血症候群に関連した症状を呈するが,脳梗塞を生じることは稀である.今回我々は,右鎖骨下動脈狭窄症により脳塞栓症を繰り返した症例を経験したので報告する.症例は,両側小脳半球の脳梗塞で入院となった65歳男性で,当初は塞栓源が不明であり,抗血栓薬での保存的加療を開始したが,その後も後方循環領域の脳梗塞を繰り返した.精査により右鎖骨下動脈起始部の狭窄によるartery-to-artery embolismと診断し,同病変に対してステント留置術を行い,良好な転帰を得た.これまでに同様の報告はないが,鎖骨下動脈狭窄により脳塞栓症を繰り返す場合があり,塞栓源検索の際に念頭に置くべきである.また,右鎖骨下動脈狭窄症に対する血管内治療では,右総頚動脈と右椎骨動脈の血管支配領域への塞栓性合併症に留意する必要があり,dual protectionが有用である.

  • 和田 誠人, 池田 宏之, 上里 弥波, 黒﨑 義隆, 谷村 麻衣, 髙田 賢介, 紀之定 昌則, 沈 正樹
    2023 年 45 巻 5 号 p. 394-400
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/04/12
    ジャーナル オープンアクセス

    43歳女性.仕事で当院を訪問中に心室細動により心肺停止となったが,直流除細動器により自己心拍は再開した.左室駆出率が30%へと低下していたが,冠動脈に有意狭窄を認めなかった.重度の左室低心機能と急性心不全に対して,右大腿動脈経由で胸部下行大動脈に大動脈内バルーンポンプ(IABP)が挿入されて,補助循環が開始された.頭部CTで破裂脳動脈瘤による重症SAHと診断し,たこつぼ型心筋症に伴う心機能低下と判断した.IABP駆動により循環動態は安定化しており,脳室ドレーンを挿入し,右上腕動脈アプローチでコイル塞栓術を行った.経時的に心機能の改善を認め,第3病日にIABPを抜去し,良好な転帰が得られた.重症SAHで循環動態安定化のためのIABP駆動中であっても,初回CTで致命的な脳損傷がなければ,早期の頭蓋内圧管理と再破裂予防の動脈瘤治療が良好な転帰につながるかもしれない.

  • 穴澤 徹, 滝川 知司, 成合 康彦, 杉浦 嘉樹, 河村 洋介, 鈴木 亮太郎, 高野 一成, 永石 雅也, 兵頭 明夫, 鈴木 謙介
    2023 年 45 巻 5 号 p. 401-406
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/04/13
    ジャーナル オープンアクセス

    ヘパリンは,血管内治療において一般的に使用されているが,術中のヘパリン起因性血小板減少症に関しては,あまり知られていない.患者は52歳女性.頭痛後に意識障害を呈し,救急搬送された.CTによりSAHと診断し,MRAで脳底動脈–左上小脳動脈分岐部に動脈瘤を認め,コイル塞栓を行った.治療中にヘパリン起因性血小板減少症によると考えられた多発血栓を認め,直ちにアルガトロバンによる治療を開始したが,多発脳梗塞を来した.脳外科領域の血管内治療中にヘパリン起因性血小板減少症を呈した報告は少なく,破裂脳動脈瘤におけるコイル塞栓中の発症は過去1例であった.ヘパリン起因性血小板減少症は稀であるが,重篤な合併症を来し得るため,早期に発見し,治療を開始することが重要である.

  • 佐藤 幸貴, 請田 裕人, 三木 一徳, 松原 啓祐, 阿部 肇, 日當 悟史, 千葉 薫, 岡林 賢, 朝戸 裕子, 佐藤 博明, 青野 ...
    2023 年 45 巻 5 号 p. 407-413
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/04/19
    ジャーナル オープンアクセス

    健常な27歳男性.発熱と全身痙攣のため受診.COVID-19抗原検査で陽性であり,胸部CTで肺炎像を認め,中等症IのCOVID-19の診断で入院となった.入院後中等症IIに増悪したが,ステロイド内服で軽快し退院した.しかし,発症後20日目に左上下肢の脱力が出現し,その2日後に再受診.精査の結果,右中大脳動脈領域の脳梗塞と左S状静脈洞血栓症の診断で再入院となった.その際,D-dimerは1.32 µg/mlと高度上昇は認めず,その他の凝固異常や血栓素因は認めなかった.脳梗塞の原因として,頭部MRIの経時的な変化から,脳動脈解離によるものと判断し,脳静脈洞血栓症と併せ,抗凝固療法と降圧管理を行い,粗大な麻痺なく退院となった.COVID-19感染により,脳動脈解離と血栓症という異なる機序の脳血管障害を同時に呈した,非常に稀な症例を報告する.

  • 古賀 正晃, 溝口 忠孝, 橋本 剛, 田川 直樹, 森 興太, 桑城 貴弘, 矢坂 正弘, 岡田 靖, 杉森 宏
    2023 年 45 巻 5 号 p. 414-419
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は43歳の女性.来院前日より頭痛,書字不能,言語理解悪く当院を受診.頭部CTで左頭頂葉皮質下と左頭頂部皮質血管に高吸収域を,頭部MRI T2*で同部位に線状の低信号域を認めた.入院翌日の頭部MRVで左頭頂部皮質静脈の描出不良あり,脳静脈血栓症に伴う皮質下出血と診断した.血液検査では鉄欠乏性貧血を,腹部CTで径8 cm大の子宮筋腫を認め,子宮筋腫による貧血が考えられた.プロテインS/C・アンチトロンビン3の欠損や抗リン脂質抗体などの血栓性素因はなかった.脳出血に対して降圧療法と抗浮腫療法,貧血に対して鉄剤投与,血栓症に対して抗凝固療法を行い,徐々に症状は改善した.右下四分盲,軽度の感覚性失語,失書が残存したため,第20病日にリハビリ目的で転院した.貧血を有する脳出血の症例では,脳静脈血栓症を鑑別に挙げ,早期診断を要する.

  • 木村 智輝, 川尻 智士, 山田 慎太朗, 細田 哲也, 新井 良和
    2023 年 45 巻 5 号 p. 420-425
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)はリンパ腫が血管内に増殖する疾患であり,貧血や低アルブミン血症,血清乳酸脱水素酵素の上昇などを呈する.今回我々は,脳梗塞がこれらの症状に先行し,診断に難渋したIVLBCLを経験した.症例は65歳男性.ふらつきで受診し,頭部MRIで多発脳梗塞を認めた.経食道心エコーで左心耳内血栓を認め,心原性脳塞栓症として治療するも,脳梗塞を繰り返した.経過中に微熱が出現し,貧血と低アルブミン血症,血清乳酸脱水素酵素,可溶性IL-2受容体の上昇を認めた.ランダム皮膚生検で,IVLBCLと診断した.化学療法を施行したが,3年後に死亡した.本例は左心耳内血栓を合併し,全身症状が出現するまで心原性脳塞栓症との鑑別が困難だった.抗凝固療法中にもかかわらず,短期間に脳梗塞を繰り返す場合には,IVLBCLも念頭に置く必要がある.

  • 寺尾 和一, 吉田 光宏, 相見 有理, 石田 衛, 濱﨑 一, 水谷 尚史, 中西 浩隆, 中林 規容
    2023 年 45 巻 5 号 p. 426-431
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    [早期公開] 公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス

    生来健康な34歳男性.発熱にて精査中,頭痛を主訴に左脳出血を発症し,精査加療目的に入院した.血液培養からLactobacillus rhamnosusが同定され,心臓超音波検査にて大動脈弁に疣贅を指摘されたため,感染性心内膜炎と診断された.本患者は1日推奨量の10倍以上のヨーグルト摂取を行っており,これが侵入門戸と推定された.抗生物質による加療を開始していたにもかかわらず,右脳出血を続発した.血腫内に脳動脈瘤が認められ,保存加療中に脳動脈瘤が経時的に増大したため,感染性動脈瘤と診断し,開頭脳動脈瘤切除術を施行した.発症から33日後に大動脈弁置換術が施行され,その後リハビリテーション目的に転院した.ヨーグルト製品の過剰摂取によるLactobacillus菌血症は,少ないながらも報告があり,本症例のように感染性心内膜炎を発症し,細菌性脳動脈瘤の形成,破裂に至る可能性も考慮すべきである.

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