論文ID: 10473
脳動静脈奇形(arteriovenous malformation: AVM)に対する定位放射線治療は,安全かつ効果的な治療法として広く普及しているが,重篤な合併症の報告もあり注意が必要である.症例は63 歳の男性で,出血発症の松果体部AVM に対して8 年前にγナイフ治療を受けていた.ふらつきと反応の鈍さのため当院へ救急搬送となり,頭部CT で両側側脳室および第三脳室の拡大を認めた.中脳水道狭窄症による非交通性水頭症が疑われ神経内視鏡で観察したところ,中脳水道入口部に膜様形成を認めた.γ ナイフ治療による炎症が中脳水道周囲の組織に波及し,組織が瘢痕化する過程で中脳水道狭窄症を生じたと考えた.本症例では第三脳室底開窓術により水頭症は改善し,症状も消失し再発なく経過している.我々が検索したかぎりでは,AVM に対するγ ナイフ治療後,同様の機序で中脳水道狭窄症を生じた症例の報告はなく,極めて稀な経過を呈した症例であった.