論文ID: 11051
症例は30歳女性.妊娠6週の悪阻出現後,7週に頭痛,8週に右片麻痺を認めた.意識はJCS-1で,右半側空間無視と右片麻痺を認めた.頭部MRI/MRVにて脳静脈洞血栓症と診断した.血液検査から,プロテインS欠乏症と妊娠時一過性甲状腺機能亢進症が原因と考えられた.ヘパリン持続投与にて神経・画像所見は改善した.妊娠11週からヘパリン皮下注に変更した.妊娠27週に注射部位に一致した硬結と掻痒を伴う紅斑が出現し,同薬による遅発性過敏反応と診断した.ヘパリン減量,注射部位変更,ステロイド剤外用にて治療を継続した.妊娠38週に経腟分娩で出産したが,母子共に問題はなかった.産後46日でヘパリンを中止したが,血栓症や皮膚所見の再燃はない.今後,再妊娠時において,抗凝固療法は必要となる可能性が高いと予測されるため,胎盤・母乳移行や催奇形性を考慮した,慎重な代替薬の選択が必要である.