論文ID: 11160
症例は86歳の女性.発熱および意識障害を呈した肺炎球菌性髄膜炎に対して,抗菌薬とデキサメタゾンによる治療を開始した.髄膜炎症状は改善したが,四肢の麻痺が出現し,発症7日目の頭部MRIで多発する脳梗塞病変を認めた.D-dimer 49.8 µg/mlと著増していたが,心原性脳塞栓症を疑わせる所見はなく,髄膜炎に伴う頭蓋内限局性のびまん性脳血管内凝固(diffuse cerebral intravascular coagulation)が原因と考えられた.抗凝固療法を開始後は脳梗塞の再発はなく,脳主幹動脈の狭窄や血管壁の増強効果も認めず,血管攣縮や血管炎は否定的であった.細菌性髄膜炎に伴う脳梗塞の治療法は確立されていないが,diffuse cerebral intravascular coagulationの病態に対しては抗凝固療法が有効である可能性が示唆された.