1988 年 10 巻 4 号 p. 355-363
脳血管攣縮における血小板機能の役割を解明するために, 脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血症例を対象に血小板凝集能, β-TG, TXB2の採血部位別 (内頚静脈, 末梢静脈) の経時的変動を比較検討した.
採血部位別の測定値を比較すると, 末梢静脈血に比して内頚静脈血測定値は病状と良く相関し, また手術中採血した上矢状静脈洞血の測定値と近似的な値を示したことから頭蓋内環境の検索には内頚静脈からの採血が適すると思われた.
内頚静脈血測定値をもとに攣縮発生の有無による経時的変動を比較すると, 非攣縮例では小さな変動で経過したのに対し, 攣縮例では攣縮発生以後に全測定項目とも何等かの亢進状態を示した.特にβ-TGの亢進程度は臨床経過, 予後と相関が認められ, 攣縮時の脳虚血症状の進展に対する血栓傾向の関与が示唆された.