脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
脳底動脈閉塞症における聴性脳幹反応の経時的変化
高頻度刺激法を用いて
佐藤 達朗川畑 信也長田 乾佐藤 雄一平田 温
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 10 巻 5 号 p. 412-417

詳細
抄録

低頻度刺激法 (毎秒10回刺激) 及び高頻度刺激法 (毎秒50回刺激) による聴性脳幹反応 (ABR) を脳底動脈閉塞症の1例で発症当日より経時的に施行した.症例は71歳, 女性。突然の意識障害で発症, 神経学的に意識障害, 水平方向眼球運動障害, ocular bobbing, 右ホルネル徴候, 左側末梢性顔面神経麻痺, 弛緩性四肢麻痺, 深部反射の減弱, 病的反射を認めた.脳血管撮影では左椎骨動脈の後下小脳動脈分岐後の閉塞, 脳底動脈の起始部での完全閉塞を認めた.聴性脳幹反応は第1, 第2病日にはいずれの刺激でも異常がみられなかったが, 第3病日には高頻度刺激で異常を認め, 第4病日には両刺激法で異常を認めた.以上の所見は高頻度刺激法の鋭敏性を示唆する.また本例で当初ABRで異常を認めなかったのは病変が橋底部に限局していたためと考えられた.脳幹部脳血管障害の脳幹機能の評価法として高頻度刺激法は極めて有用である.本法の臨床的意義につき考察を加え報告した.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本脳卒中学会
前の記事 次の記事
feedback
Top