抄録
Crossed cerebellar diaschisis (CCD) の発現に及ぼす要因を明らかにする目的で, 一側大脳半球病変例を対象に, I-123 IMP-SPECTを用いて検討した. (1) CCDは脳梗塞18/31例 (58.1%) や脳出血4/6例 (66.7%) 以外に, 脳腫瘍1/2例 (50.0%), 慢性硬膜下血腫1/4例 (25.0%) にも観察された. (2) 脳梗塞31例 (47検査) について数量化理論2類を用い解析した結果, CCDの発現には梗塞部位と梗塞範囲の関与が大きく, 運動麻痺, 発症後時間の関与は小さいと考えられた. (3) 梗塞部位との関連では, 前頭葉, 頭頂葉, 側頭葉を含む複数の脳葉の障害例や, 基底核, 内包を中心とした比較的大きな深部梗塞例でCCDは高頻度かつ高度にみられた. (4) 反復検査の結果, 小梗塞例では一過性可逆的であったのに対し, 中等大以上の梗塞例では長期にわたり持続する傾向がみられ, その発現には皮質橋小脳路の変性が推測された.
以上から, CCDには病変部位と範囲によりreversible diaschisisとirreversible degenerationの両者の発現機序が示唆された.