抄録
猫中大脳動脈閉塞モデルを用いて, Hemodilution療法の虚血脳に対する有用性を検討した.成猫 (2.5~3.5kg) 13匹 (hemodilution群 (HD群) 5匹, control群8匹) を用いた.HD群は虚血後低分子デキストランでisovolemicに行い, Htを36%より24%へ低下させた.虚血中心部で水素クリアランス法による脳血流 (CBF) 測定と脳波記録を行ない, micropressuresystemを用いて, 同部の軟膜動脈圧を非閉塞的に連続記録し, 虚血後180分まで観察した.CBFは, HD群において, 虚血後60分以後control群に比し, 有意の脳血流増加を示した.pial anastomosesの血管抵抗は, HD群では, 90分以後低値となったが, 脳細小動脈抵抗は, 180分の時点で低下が認められた.脳波は, 180分後にはHD群の方がやや良好な改善を示したが有意差には至らなかった.以上のことより, Hemodilution療法では血流改善は認められるものの, 脳代謝改善には至らなかったと思われる.