脳卒中
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血小板由来物質及び分離血小板の犬摘出脳底動脈に及ぼす影響
内皮細胞の役割
李 毅平和賀 志郎金丸 憲司
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1989 年 11 巻 5 号 p. 544-549

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抄録

犬摘出脳底動脈を用い, 洗源血小板及び血小板由来物質の等尺性張力に及ぼす影響を検討した.Adenosine diphosphate (ADP) 及びadenosine triphosphate (ATP) は内皮依存性弛緩反応を惹起した.セロトニンは摘出犬脳血管を用量依存性に収縮させたが, 内皮擦過標本では収縮反応の有意な増大が認められた.一方, トロンボキサンA2による収縮反応は内皮の有無に拘らず, 一定であった.洗源血小板浮遊液を栄養槽中へ添加すると用量依存性に収縮反応が出現した.この収縮反応は内皮擦過標本では有意に増大した.セロトニン受容体阻害剤であるketanserin と methysergide の前処置にて血小板による収縮反応は有意に抑制された.一方, indomethacin前処置にても収縮反応は不変であった.3×10-6 M prostaglandin F2αによる収縮反応が一定となった後に, 血小板浮遊液を添加すると, 軽度の収縮反応増大が認められた.その収縮反応増大はapyraseの添加により影響を受けなかった.以上の実験結果により, 脳血管と血小板との間に明らかな相互作用が存在することが判明し, その作用は内皮細胞により調節されているものと考えられ, そして血小板による犬脳底動脈の収縮こはセロトニンの占める役割が大きく, 内皮細胞障害後にはEDRFの放出の障害が収縮反応の最も大きな機序であると考えられる.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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