脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
脳塞栓症を併発したHolt-Oram症候群の一例
正門 光法井林 雪郎松井 敏幸佐渡島 省三藤島 正敏
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 13 巻 5 号 p. 423-427

詳細
抄録

上肢の骨形成不全に先天性心疾患を合併するHolt-Oram症候群に脳塞栓症を併発した稀な一症例を経験した.症例は54歳, 右利き, 男性.生下時より左上肢の奇形を除けば正常発育であったが, 20歳時に初めて心房中隔欠損症 (ASD), 動脈管開存症 (PDA) を指摘され, PDAの切離術を受けた.38歳時にASDの閉鎖術, 45歳時には心房細動並びに徐脈発作のためにペースメーカー挿入術を施行された.平成元年4月10日, 正午ごろ, 電話中に突然意識障害, 左片麻痺が出現し入院となった.頭部CTスキャンでは右前頭葉から右側頭葉に低吸収域を認め, 一部に高吸収域の部分も認められた.心電図上は心房細動, ペースメーカー調律を呈していた.心エコーでは左房内に明らかな血栓は認められなかったが, 臨床経過ならびに梗塞巣の部位等より脳梗塞症と診断した.塞栓源として, ASD, PDAの術後であること, 心房細動, ディマンド型のペースメーカーの失調に起因した血栓形成の関与が強く示唆された.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本脳卒中学会
前の記事
feedback
Top