抄録
現在までに数例の報告しかみられない, 原発性のAbbie症候群の1症例を呈示する.この61歳の男性は, 入院時に左側不全運動麻痺及び左同名半盲を呈していたが, 知覚障害は認められなかった.CTスキャン及びMRIでは, 右側の, 内包後脚の後2/3・外側膝状体の外側半分・視放線の基始部から鈎回におよぶ梗塞巣が認められた.IMP-SPECTでは, 早期画像で患側大脳半球のびまん性低潅流が, 遅期画像で右前脈絡動脈領域に再分布現象がみられた.脳血管撮影では, 右前脈絡動脈の閉塞が認められた.患者は, 1ヵ月半の内科及び理学療法の結果, 左側不全運動麻痺の著明な改善をみて退院したが, 同名半盲は不変であった.
前脈絡動脈閉塞症では必発と考えられている半側知覚障害を呈さなかったAbbie症候群の1症例を報告し, 内包周辺の血管分布の観点から, その機序に考察を加える.