1992 年 14 巻 4 号 p. 402-408
症例は54歳男性で1990年6月下旬に右手指の運動障害に気づき, 7月中旬には言語障害が出現し入院となる.右上肢の中等度の脱力, 軽度の感覚性失語, 失書, 失算があり, 頭部CT検査にて左中大脳動脈領域に低吸収域を認め脳梗塞と診断した.入院時検査にて血小板数68,000/μl, 血小板結合IgG (PAIgG) 陽性, 骨髄像正常から特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) の合併が認められた.血小板凝集能はADP・アラキドン酸・エピネフリンともに再現性を有し低下していた.梅毒反応生物学的偽陽性を認め, 抗カルジオリピン抗体 (抗CL抗体) が陽性であった.
本例は血小板数が減少しているにもかかわらず脳梗塞を発症しておりITPと脳梗塞の合併の機序として抗CL抗体の関与が考えられた.