脳卒中
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脳卒中急性期合併症としての麻痺性イレウス
-3症例の検討-
木村 正英蕎麦田 英治
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1992 年 14 巻 4 号 p. 437-441

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抄録

脳卒中急性期に機能的な腸管の麻痺 (麻痺性イレウス) を起こした3症例を報告する.これは, 1年間に2週間以上当科に入院した全脳卒中患者の3.5%であった.症例は, 74歳男性のクモ膜下出血, 69歳男性の橋出血および88歳男性の右前頭葉白質梗塞であり, いずれもその急性期において, 手術待機中あるいは保存的治療中に, 経口摂取を開始して数日から12日目頃に著明な腹部膨満が起こり, 経口摂取が不可能となった.グル音は消失し, 理学的に鼓音を認め, 腹部単純X線写で小腸から大腸までの全腸管内に中等度から高度の拡張した腸管内ガス像を認めた.絶食, 中心静脈栄養, グリセリン浣腸, パントテン酸投与など腸管への負荷を軽減し蠕動を刺激する処置により1週間前後で腹部症状は改善した.これら3例のうち特に2例では, 一般にいわれる麻痺性イレウスの明らかな原因は指摘されず, 脳卒中そのものが麻痺性イレウスを起こしやすい基礎状態になりうると思われた.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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