抄録
脳虚血に対する塩酸ビフェメラン (Bifemerane hydrochloride) の効果を実験的に検討した.Pulsinelli等の報告によるラット主幹4動脈閉塞による前脳虚血モデルを用いた.30分間の4動脈の閉塞の後, 両側の総頸動脈の血流を再開し, その後の急性期の脳内エネルギー代謝の状態を31P-magnetic resonance spectrum (MRS) を測定する事により, in vivoで, かつ非侵襲的に観察した.さらに, その後のラットの生存期間を測定した.塩酸ビフェメラン投与群と非投与群とで結果を比較検討した.平均生存期間は非治療群では4.8日であったが, 塩酸ビフェメラン投与群では, 12.8日に延長した.31P-MRS測定の結果, 血流再開により早期からエネルギー代謝は急速な回復を示したが, 塩酸ビフェメランにより, このエネルギー代謝の急激な回復という変化が抑制される傾向が認められた.脳内エネルギー代謝の回復過程への効果と, 生存期間の延長という結果との間の関連に関しての詳細は不明な点が多いが, 塩酸ビフェメランの治療効果を客観的に評価する結果として興味あるものと考えられる.