抄録
著者らはラットに中大脳動脈閉塞モデルを用いて, 梗塞周辺部神経細胞にbcl-2蛋白が発現されることを, 免疫組織化学とWestern blotにて確認した.bcl-2蛋白は虚血急性期 (4日目) に梗塞周囲の大脳皮質神経細胞胞体に免疫組織化学的に陽性であり, 慢性期 (21日目) には梗塞周囲の大脳皮質, 内包, 大脳脚, 脳梁, 橋の軸索に部分的に陽性であった.Western blotにより梗塞後に発現するbcl-2蛋白は, ラット胸腺やヒト白血病培養細胞HL60が産生するbcl-2と同じ分子量 (bcl-2α) と確認した.遺伝子bcl-2の脳虚血における役割については未だ不明であるが, 血液細胞ではいわゆるアポトーシス (apoptosis) を抑え, 生存を維持する役割を持っている.梗塞周辺の神経細胞は虚血負荷を与えられているが, 細胞死防御のためbcl-2蛋白を急性期に発現し, 慢性期においても, なおそれらの軸索に存在させ細胞脱落を防御していることが想像された.