抄録
症例は77歳女性.深夜起立時のめまいを主訴として来院.頸動脈超音波検査で右内頸動脈狭窄症 (85%) が疑われ入院精査した.頭部CT, MRIに著変を認めなかったが, intravenous digital subtraction angiographyにより右内頸動脈分岐部の高度狭窄が, さらに24時間血圧モニターにより夜間の血圧低下が明らかとなりめまいとの関連が示唆された.Positronemission CT (PET) では脳循環代謝諸量は正常であったため, ticlopidine 100mg/日で外来治療とした.退院13日後に左片麻痺が出現.以後二度にわたり, 血圧下降に伴って麻痺と意識レベルが増悪した.頭部CTやMRIでは, 右大脳半球境界域に広範な脳梗塞が描出され, 血行力学的脳梗塞と診断した.PETでは脳血流量・脳酸素代謝率の低下が, 患側内頸動脈支配領域全体にわたって認められた.内頸動脈狭窄患者ではPETによる予後の判定に一定の限界があることが示唆された.