脳卒中
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無症候性脳梗塞患者の臨床背景
延原 幸嗣西丸 雄也
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1996 年 18 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

1983年1月より89年4月までに頭部CTを施行し, 頭部CT上大病変を持たない連続3,006例中, ラクナを認めた294例 (男193例, 女101例, 平均年齢64.5±12.5歳) を対象とし, CT撮影時に脳梗塞の既往, 症候の無いものを無症候群 (164例) 有るものを脳梗塞群 (130例) と分類し臨床背景をretrospectiveに比較検討した.無症候群は脳梗塞群に比べラクナの大きさは小さく, 個数は少ないが, 高齢者程多発していた.また高血圧の合併率が低く, 血圧の測定値も低かった.Hb, Ht, 尿酸, 総コレステロールの値は正常範囲ではあるが低値を示した.多変量解析により高血圧, Ht値が両群間の差の重要な因子と判断された.さらに無症候群に一般的な血管性危険因子を伴わない例を35.3%認め, その臨床診断として悪性腫瘍が比較的多く含まれていた.以上より無症候性脳梗塞患者は症候のある脳梗塞患者に比べ, 血管性危険因子を持つ頻度が低く, その一部には悪性腫瘍の患者が存在した.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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