脳卒中
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18 巻, 1 号
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  • 特に脳血管撮影と比較して
    明石 克彦, 加藤 庸子, 佐野 公俊, 小倉 祐子, 神野 哲夫
    1996 年 18 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脳動脈瘤の検出には従来脳血管撮影が行われてきた.しかしその検査の侵襲, 所要時間などから近年低侵襲, 短時間で生体を高速, 連続的に検査可能なヘリカルスキャンCT (Helical scanning CT : HES-CT) が普及してきた.我々は動脈瘤の描出能並びに脳神経外科領域への応用の点から脳血管撮影とHES-CTとを対比検討した.対象は64例83瘤で, うち破裂脳動脈瘤は37例である.脳血管撮影の動脈瘤検出率は97.6%でfalse negativeは前交通動脈のblister aneurysmsの1例と血栓化椎骨動脈瘤の2例であった.HES-CTの動脈瘤検出率は96.4%で, false negativeは3瘤で全例, 床突起下の内頸動脈眼動脈分岐部小動脈瘤であった.形状, 瘤内表示, 周囲血管や骨との相互関係からみた動脈瘤の総合的診断価値はHES-CTの方が脳外科治療の観点にたち優れていると思われた.HES-CTの利点は特に前交通動脈領域の血管の重複する部位や椎骨脳底動脈系の動脈瘤診断に優れ, 動脈瘤頸部や瘤内部構造の評価が可能な点にあった.また3-D切削プログラムによる任意, 多方面からの高度な脳神経外科手術の術前シミュレーション像が得られた.以上より脳神経外科治療の立場から, 動脈瘤の形状把握, アプローチの選択, 治療方法の決定にHES-CTは従来の血管撮影に比し総合的な診断価値が高いと思われた.
  • 郡山 達男, 山口 慎也, 田中 英司, 山村 安弘, 中村 重信
    1996 年 18 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    頭部MRIでみられる小血管病変に基づくと考えられる虚血性病変と脳血管障害の危険因子との相関を検討した.その結果, 脳室周囲病変ならびに皮質下白質部, 基底核部や脳幹部の小虚血病変の危険因子として加齢の重要性を再確認した.さらに, これらの小血管病変は症候性脳梗塞において, 無症候性脳梗塞に比較して, その程度がより高度であったことから, 無症候性脳梗塞にみられるこれらの病変は, 症候性脳梗塞の前段階を示唆していると考えられる.皮質下白質部と基底核部との小梗塞病変は, ともに, 加齢, 脳血管障害や高血圧の既往との間に関連があったことから, 小血管病変においては, 皮質動脈から分枝する髄質動脈領域と穿通枝動脈領域との間に共通した成因の存在を示唆した.小血管病変と総コレステロール, 中性脂肪やHDL-コレステロールとの問には有意の相関がなかった.したがって, 本研究の結果は, 小血管病変は大血管病変とは危険因子に相違があることを示唆した.
  • variationと加齢による変化
    星野 晴彦, 高木 誠, 稲福 徹也, 足立 智英, 瀬川 浩
    1996 年 18 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    3次元Time of Flight MRアンギオを用いてWillis動脈輪のvariationと加齢に伴う変化を検討した.対象は主幹動脈閉塞および動静脈奇形を除いた2,011例である.前大脳動脈A1部は右側96例 (4.8%), 左側68例 (3.4%) で描出されず, 1,615例 (80.4%) で左右差なく描出された。加齢と共に左右差なく描出される例は減少し, 左右いずれかが描出されない例が増加した.後交通動脈が後大脳動脈P1部よりも太く, 後頭葉への血流が内頸動脈より主に灌流される胎児型は右側397例 (19.8%), 左側334例 (16.7%) で認められた.加齢と共に後交通動脈が描出されない例が増加した.Willis動脈輪の形態は加齢と共に変化することが考えられた.
  • 小松本 悟, 奈良 昌治
    1996 年 18 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脳出血例において, 急性期および亜急性期における血漿ET-1とnoradrenalin値の同時測定を行い, ET-1とnoradrenalin作動神経系の相互関係を検討した.対象は, 脳出血患者37名である.急性期における血漿ET-1値 (X), 血漿noradrenalin (Y) の回帰直線はY=148.62X-18.38を示し, 相関係数 (r) は0.555で, p<0.01で有意であった.亜急性期においては, Y=251.15X+196.08の回帰直線を得た.相関係数 (r) は0.867であり, p<0.01で有意であった.両回帰直線の問には, 有意な差を認めた (p<0.01).急性期におけるET-1に対する血漿noradrenalinの比の平均値は, 147.5±88.4であった.亜急性期についてもその比は, 426.7±258.0であり, 有意に急性期に比し高値であった (p<0.01).この事実はET4が亜急性期にnoradrenalin作動神経終末部に作用し, noradrenalin放出を促進させた可能性がある.
  • 延原 幸嗣, 西丸 雄也
    1996 年 18 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    1983年1月より89年4月までに頭部CTを施行し, 頭部CT上大病変を持たない連続3,006例中, ラクナを認めた294例 (男193例, 女101例, 平均年齢64.5±12.5歳) を対象とし, CT撮影時に脳梗塞の既往, 症候の無いものを無症候群 (164例) 有るものを脳梗塞群 (130例) と分類し臨床背景をretrospectiveに比較検討した.無症候群は脳梗塞群に比べラクナの大きさは小さく, 個数は少ないが, 高齢者程多発していた.また高血圧の合併率が低く, 血圧の測定値も低かった.Hb, Ht, 尿酸, 総コレステロールの値は正常範囲ではあるが低値を示した.多変量解析により高血圧, Ht値が両群間の差の重要な因子と判断された.さらに無症候群に一般的な血管性危険因子を伴わない例を35.3%認め, その臨床診断として悪性腫瘍が比較的多く含まれていた.以上より無症候性脳梗塞患者は症候のある脳梗塞患者に比べ, 血管性危険因子を持つ頻度が低く, その一部には悪性腫瘍の患者が存在した.
  • 吉村 公比古, 高野 真, 原田 清, 佐古 伊康, 松林 公蔵
    1996 年 18 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    ラクネ梗塞例における患側脳血流と血管狭窄病変との関連を検討する目的で, 健側には有意の狭窄病変を認めないラクネ梗塞17例につき, 99mTc-HMPAOを用いたpatlak plot法による脳血流の定量値と血管撮影上の狭窄度との比較検討を行った.脳血流量の測定は, 松田らの方法によりbrain perfusion index (BPI) から中大脳動脈領域の平均脳血流量 (mcaCBF) を求め, 患側の健側に対する低下率%decrease of mcaCBFを算出した.内頸動脈と中大脳動脈の狭窄度を0から4までスコア化した.血管狭窄スコア別に%decrese of mcaCBFを比較すると, 両者は有意の関連を示し, 特にスコア3 (90%狭窄) 以上の群では, %decrease of mcaCBFはスコア2以下の群に比して有意の低下を示した.脳血流には, 血管狭窄病変以外にも側副血行路, diaschisisが関与するが, 脳血流低下の程度を評価することは二次予防を考えるうえからも重要と考えられた.
  • 永山 富子, 永山 正雄, 津田 道雄, 篠原 幸人
    1996 年 18 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    本邦の脳梗塞患者82例および非虚血性疾患の患者33例 (合計115例) においてactivatedprotein C ratio (activated protein C添加時APTT/非添加時APTT) の測定および遺伝子異常 (第V因子のArg506→Gln) の有無につき検討した.その結果, 繰り返し測定でratioが2.0未満を示す例はなかった.欧米の報告では, APC resistance (APC-R) 例の大部分は第V因子のexon10のArg506 (CGA) のGln (CAA) への変異が原因とほぼ確証されている.本邦115例でこの遺伝子変異の有無につき検討したが, 変異を示す症例は存在しなかった.従って, 日本人においてAPC resistanceの頻度は非常に少ないものと考えられた。
  • 喜田 智幸, 本間 温, 蓮井 光一, 岩佐 綱三, 長尾 省吾
    1996 年 18 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    血小板由来増殖因子 (PDGF) は, くも膜下出血 (SAH) 後の遅発性脳虚血の原因となる動脈壁の増殖型血管症 (PA) の惹起物質と考えられている.本研究ではPDGF拮抗剤であるトラピジルのPA発現抑制効果を検討した.ネコの中大脳動脈 (MCA) 破綻によるSAHモデル (invivo) を用い, SAH2日前より14日後までトラピジルを投与し (20mg/kg/day) 破綻部近傍のMCAの組織学的検索を行った.トラピジル投与群では, PAの定量的指標であるMCAの内径, 壁の厚さともに非投与群と有意差を示した.さらにPAに伴う細胞外基質の収縮に対するトラピジルの抑制効果をラット大動脈平滑筋細胞によるコラーゲンゲル収縮モデル (in vitro) にて観察した.トラピジル投与により (10,100μg/ml), ゲル収縮が用最依存的に抑制された.トラピジルのPA発現および細胞外基質収縮の抑制効果が認められたことより, 遅発性脳虚血予防の目的でトラピジルの臨床応用の可能性が示された.
  • 堂坂 朗弘, 橋本 洋一郎, 木村 和美, 内野 誠, 安藤 正幸
    1996 年 18 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性.気分不良, 左後頭部痛, 左顔面のしびれ感, 右片麻痺で発症し, 3病日の当院入院時には左延髄外側症候群を呈し, 左椎骨動脈の動脈解離が疑われた.入院当日に施行した神経超音波検査では左椎骨動脈が後下小脳動脈分岐後の閉塞パターンを呈した.脳血管造影では, 左椎骨動脈の後下小脳動脈分岐前の狭窄, 分岐後の閉塞を認め, 動脈解離が疑われた.17病日の頭部MRIのT2強調画像で左椎骨動脈に隔壁を認めた.隔壁を認めたスライスでの椎骨動脈のMRI所見として隔壁で分割された半側が17病日, 41病日, 81病日にT2強調画像で等信号に近い低信号→高信号→低信号, T1強調画像で高信号→高信号→等信号から低信号と経時的に変化しintramural hematomaと考えられ, 頭蓋内椎骨動脈の動脈解離と診断できた.17病日のT2強調画像で示された隔壁はintimal flapと考えられ, 本症例はintimal flapがMRIで捉えられた貴重な症例であった.
  • 千田 圭二, 沖田 直, 高瀬 貞夫
    1996 年 18 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    高血圧性と考えられる被殻出血が, 初回出血の12日後に対側に再発した36歳女性例を報告した.出血時間が, 初回出血から再出血の急性期にかけて延長し, 約4週間で正常化した点が注目された.血圧の動揺が一因となって再出血が起こり, この出血を出血時間の延長が助長したと推察されたが, 出血時間を一過性に延長させた原因は不明だった.1992年から1994年に経験した出血性素因のない急性期脳内出血37例をretrospectiveに検討したところ, 2例で出血時間が一過性に延長していた.この結果から, 脳内出血自身が出血時間を延長させる可能性を指摘した.
  • 橋本 洋一郎, 山中 信和, 木村 和美, 米原 敏郎, 内野 誠
    1996 年 18 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    瀉血療法が無効で3カ月にわたる進行型脳梗塞を来した真性多血症の59歳男性を報告した.3年前より多血症が指摘されていた.左手のしびれと脱力が出現し脳梗塞と診断され, 瀉血療法や抗血小板療法で治療がなされたが無効で, 緩徐に進行し意識障害, 四肢麻痺と全失語を呈した.X線CTでも両側テント上に梗塞が拡大した.アルキル化剤の投与により多血症や血小板増多症の改善とともに症候は安定し, 脳血管造影で左中大脳動脈M2の閉塞を認めた.真性多血症, 高齢, 頻回の瀉血療法, 高血圧や糖尿病, 化学療法開始の遅れなどが進行型脳梗塞の要因と考えられた.真性多血症患者が脳梗塞を発症し潟血が無効の場合は, 早期に化学療法を行う必要がある.
  • 寺崎 修司, 米原 敏郎, 藤岡 正導, 橋本 洋一郎, 内野 誠
    1996 年 18 巻 1 号 p. 70-73
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    症例は既往疾患のない38歳, 男性.ゴルフ練習を4時間した後, 右後頸部痛が出現した.その2時間後から左上肢のしびれと歩行障害を自覚し, さらに2日後から吃逆が出現した。第4病日の入院時には症候学的に右延随外側症候群を呈していた.第5病日の右椎骨動脈造影で右後下小脳動脈がV2 portionから分岐し, 右椎骨動脈のV3 portionから両側椎骨動脈合流部までの血管壁不整を伴う狭窄 (string sign) とその直後の閉塞 (tapering occlusion) を認めた.この部位は第56病日には再開通していた.これらの所見は頭蓋外から頭蓋内までの椎骨動脈解離を示唆するものと考えられた.MRIにて下部延随外側の右側に梗塞巣を認めた.椎骨動脈解離の原因としてゴルフスウィングによる外力が考えられた.
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