抄録
中脳病変に伴う垂直性眼球運動障害の発現機序について内側縦束吻側介在核との関連から検討した.症例1は, 左動眼神経麻痺と対側の上下転麻痺, 右上下肢の協調運動障害がみられ, 症例2では, 垂直性注視麻痺を主徴とする眼症状が唯一の神経徴候であった.MRIから, 症例1では左中脳被蓋傍正中背側部に, 症例2では右後交連に病変が確認された。症例1の上方注視麻痺は, 対側からの核上性線維束を含んだ動眼神経核損傷に, 症例2の上方注視麻痺は, 後交連右側で上方注視を司どる核上性線維束の両側性損傷によって出現した.下方注視麻痺の存在から2症例の損傷は同側の内側縦束吻側介在核に波及している可能性が考えられた.