1980 年 2 巻 4 号 p. 377-381
症例は73歳女性.昭和54年8月15日, 突然言語障害, 意識障害を生じたが, 数時間で回復した.8月25日, 再び同様の発作があり当科へ救急入院した.入院時, 運動性失語症, 右半身不全麻痺が認められた.血圧の変動が著しく, 左総頚動脈写上, 左内頚動脈サイフォン部に軽度の狭窄とprimitive trigeminal arteryが認められ, 左内頚動脈領域のTIAに続発した脳梗塞と診断し保存的治療を行った.約1ヵ月後に再び大発作を生じ, 半昏睡, 瞳孔不同が出現したため再び脳血管撮影を行ったところ, 左内頚動脈サイフォン部の不完全閉塞が認められた.本症例においては, 症状発現の機序とprimitive trigeminal arteryの存在との間に密接な関連があると考えられたため, 若干の文献的考察を行った.また, 閉塞性脳血管障害における本遺残動脈の意義についても述べた.