抄録
従来から上位脳幹部に対する血行再建術として上小脳動脈(superior cerebellar artery;SCA)や後大脳動脈(posterior cerebral artery;PCA)のP2部を対象にバイパス術が施行されてきたが,深部での手術操作を要するため脳圧排による脳挫傷や静脈梗塞など,少なからぬ合併症が報告されている.我々は同領域の灌流低下が推定された3症例に,浅側頭動脈(superficial temporal artery;STA)をPCAの側枝である後側頭動脈(posterior tempo-ral artery;PTA)に吻合した.PTAはP2部から分枝して側頭葉底面を外側に走行する下側頭動脈群の中でも,高頻度(96%)に存在し径が大きい(平均外径1.6mm)という特徴をもつ.また今回報告した3症例では,P2部に吻合する場合と比較して平均13.3mm浅い術野で吻合することができた.PTAを吻合対象にすることで,吻合時間の短縮や脳圧排が軽度になり,バイパス開存度の向上や合併症の軽減に役立つものと考えられる.