脳卒中
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脳梗塞慢性期に遷延する貧困灌流症候群における脳循環代謝病態の検討
堤 孝一長田 乾
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1998 年 20 巻 5 号 p. 489-499

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抄録
左中大脳動脈領域の脳梗塞に基づく失語症例64例を対象に,発症3日から2,048日まで,延べ93回の脳循環代謝測定を行い,脳血流量(CBF),脳酸素消費量(CMRO2),酸素摂取率(OEF),血管通過時間(VTT),脳血管反応性(VR)について解析した.全体では18.3%にOEFの上昇した貧困灌流症候群が観察され,7.5%は発症後30日から250日までの慢性期に出現した.梗塞域では,OEFの上昇に加えて,VTTの延長,VRの低下が観察され,貧困灌流症候群を示す群ではOFFとVTTが相関していた.対側半球や後頭葉の非梗塞域でも,CBFとCMRO2が低下し,OEFの上昇やVTTの延長もみられ,潜在的な低灌流状態に加えて脳梗塞の遠隔効果が病態を修飾している可能性が考えられた.アテローム血栓性脳塞栓と心原性脳梗塞の間で慢性期の脳循環代謝病態には明らかな差異は見られなかった.
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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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