1981 年 3 巻 1 号 p. 1-8
クモ膜下出血発症後, 脳底部動脈周囲の血性髄液の無気的変化が血管攣縮あるいは意識障害の発生に関与しているとの考えに基づき髄液血液混合液の無気的孵置を行ったところそのPH値が著明に下降することが判った.そこで破裂脳動脈瘤10症例の他に重症頭部外傷6症例を加えた計16症例に対して7%重曹水の頚動脈内注入を試み脳局所のacidosis補正の脳血管攣縮解除および意識障害改善に対する有効性を検討したところ, 血管攣縮そのものには効果はみられなかったが, 特に遷延性の意識障害には極めて有効であり, その効果は注入薬剤の末梢脳血管拡張作用による脳循環改善による思われた.
以上の結果と, 髄液血液混合液の無気的孵置を応用した以前の実験結果とを考え併せることによって, 脳血管攣縮には頭蓋内局所のacidosisとprostcyclineおよびthromboxane A2合成過程が関与していると考えるに至った.