1983 年 5 巻 4 号 p. 338-346
正常高齢者の脳循環, 知的精神機能に対する社会的環境因子の影響を明らかにするために133Xe吸入法を用いて以下の検討を行なった.対象は社会的活動性の比較的低い老人ホーム居住者33名 (I群) および社会的活動性の高い地域在住志願老人49名 (II群) である.両群間に高血圧等の医学的背景因子の差は認められなかった.結果: 1) 局所脳血流量 (rCBF) はII群に比しI群で低値を示しとくに前頭, 側頭部で明らかであった.また動作性知能もI群で低下していたが言語性知能については有意差を認めなかった.2) rCBFおよび知能スコアに対する加齢の影響はI群でより早期から認められた.3) 男性ではI群で左右半球のrCBFの減少, 両知能の低下を認めたが, 女性では左半球rCBFと言語性知能は比較的よく保たれていた.以上の結果は社会的環境因子が大脳の老化に大きな影響を与えることを示しており, さらにそれには男女差が存在することが明らかとなった.