抄録
脳静脈性血管腫は剖検時にみられる頻度に比し, その臨床例の報告は極めて少ない.我々は放射線学的に本症と診断された2症例を経験した.
症例1 : 45歳女性.思春期に左前額部の血管腫と思われる腫瘤を摘除している.今回は軽度の小脳症状で発症し, 頭部CTでは小脳の低吸収域と造影剤使用後の曲線状高吸収域を呈し, 椎骨動脈写では拡張した静脈とそれに流入する多数のmedullary veinからなる典型的な静脈性血管腫の所見を呈した.症状は高浸透圧利尿剤投与で速やかに軽快し, 病態として静脈性小出血を疑った.
症例2 : 39歳男性.右頭頂部痛と嘔吐で発症し, 頭部CT, 脳血管造影で前頭葉に症例1と同様の静脈性血管腫の所見を呈した.症状は保存的療法で軽快した.
上記2症例を報告し, 本疾患の臨床症状, 放射線学的特徴などを中心に考察を加えた.