脳卒中
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右脳梁前半部梗塞により起立歩行不能となった1例
勝部 知子小林 祥泰木谷 光博山口 修平恒松 徳五郎
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キーワード: 失立失歩, 脳梁, 脳梗塞
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1984 年 6 巻 2 号 p. 204-207

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抄録
右脳梁前半部梗塞により一過性起立歩行不能を呈した1例を報告した.本例は, 協調運動にて明らかな小脳性運動失調を認めず, 臥位では両下肢とも随意運動は円滑に行なえたにも関わらず坐位及び起立歩行は不能であった.また左手書字においてのみ失行性失書と思われる症状を示したが, 視覚, 聴覚, 触覚等の各失認や運動及び着衣失行, 失語, 皮質感覚等の皮質症状を認めなかった.起立歩行障害は, 発症数日目より急速に改善した.従来検討されてきた脳梁障害患者の多くは, 脳腫瘍患者や, 手術的脳梁切断例であり, 本例の如くCT上, 脳梁にほぼ限局した急性期脳梗塞と考えられる例で脳梁障害直後より歩行について検討した報告は見られない.Geschwind以来歩行障害は脳梁と関係ないとされてきたが, 本例の如く脳梁障害の急性期には一過性歩行障害を示す場合もあり, 歩行と脳梁前半部との間に何らかの関連がある可能性を否定出来ないと思われる.
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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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