抄録
本研究の目的は脳軟膜血管と脳実質内血管に対する頚部交感神経刺激の効果を同時に比較することにより神経性調節の範囲を解明することにある.【方法】猫9匹の上頚交感神経節を, 3~8V, 300μsec, 100Hzの条件で5分間電気刺激し, その間videocameraと光電法を併用した新しいsystemで同側の脳軟膜血管口径と局所脳血液量 (CBV) の変化を同時且つ連続的に測定した.【結果】刺激当初は脳軟膜血管の収縮とCBVの減少を認めた.脳軟膜血管の収縮は刺激中持続したが, CBVは79±14秒後より増加し始め, 238±39秒後には刺激中にもかかわらず前値を越えて増加するという二相性の変化を示した.最大収縮は脳軟膜動脈10.7±3.0%, 静脈6.3±2.3%であったが有意差はなかった.【結論】交感神経の血管収縮効果は当初脳軟膜血管はもとより脳実質内血管にも及んだ.escape現象は脳循環のhomeostasisを維持するために脳実質内血管にその後生じた代償性の代謝性血管拡張と考えられた.