脳卒中
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6 巻, 2 号
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  • 本邦正常成人の脳血流値, 脳内部位別差異, および133Xe吸入法との比較
    篠原 幸人, 高本 繁治, 小畠 敬太郎
    1984 年 6 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    非侵襲的脳血流測定法である133Xe静注法の正常値, 脳内部位別差異を, 本邦正常成人27例, 男14例, 女13例, 年齢18~81歳 (平均43歳) について検討し, 同様に非侵襲的測定法である133Xe吸入法の成績と比較した.133Xe静注法による脳灰白質血流量F1の半球平均値は, 右90.3±17.5ml/100gbrain/min (mean±S.D.), 左90.0±17.8, initial slope index (ISI) の半球平均値は, 右75.1±17.0, 左74.6±17.0であった.これらの値は吸入法による値より高値であり, その理由の一つとして, 動脈血濃度を呼気から推定する点に問題があると考えた.静注法による正常者の脳血流分布は, 吸入法と同様に不均等分布を示し, 前頭部に高値であり, 頭頂部, 後頭部の一部で低値であった.静注法は吸入法にくらべ多くの利点を有し, 臨床的に有用な脳血流測定法と結論した.
  • 岩崎 章
    1984 年 6 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    電磁流量計を用い内頚動脈血流を脳血流の指標として頚部交感神経の脳循環自動調節に対する役割を検討した.
    A.頚部交感神経節前線維切断の影響 : 1) 脱血;軽度脱血群 (ΔMABP<20mmHg) におけるdysautoregulation index (D.I.) は切断前0.10±0.16ml/min/mmHgから切断後0.20±0.15ml/min/mmHgへ上昇した (P<0.1).における中等度脱血群 (ΔMABP≧20mmHg) のD.I.は切断前後で変化を認めなかった.2) 血液再注入;ΔMABP<20mmHg, ΔMABP≧20mmHg両群ともにD.I.は切断前後で有意差を示さなかった.
    B.頚部交感神経節後線維切断の影響 : 1) 脱血;軽度脱血群のD.I.は切断前0.07±0.12から切断後0.13±0.04へと上昇した (P<0.4).中等度脱血群のD.I.は切断前0.05±0.04から切断後0.12±0.10へ有意に上昇した (P<0.02).2) 血液再注入;軽度再注入群のD.I.は切断前0.07±0.11から切断後0.14±0.07 (p<0.4) へ, また中等度再注入群のD.I.は0.12±0.15から0.14±0.06へとそれぞれ上昇した.
    以上の成績は頚部交感神経節後線維が脳循環自動調節の作用機序に, より密接に関与することを示唆する.
  • 脳血管障害との関連について
    深田 倍行, 井後 雅之, 船本 浩治, 深田 忠次, 高橋 和郎
    1984 年 6 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    振動障害と中枢神経症状, 特に脳血管障害との関連について検討した.1976年から1981年の振動障害者脳卒中死亡率, 発症率及び1981年の一過性脳虚血発作有病率はコントロールとした同時期, 同年齢地域住民との間に有意差をみなかった.振動障害者のうち, 40~49歳の者はコントロールに比し椎骨脳底動脈循環不全様症状の出現頻度が高く (p<0.01), レイノー現象を認める者では更に著明であった (p<0.005).症状としては平衡障害を伴なうめまいが多く (91.3%), 1年間に3回以上めまい発作を経験したものが60.8%であった.重症な振動障害者では振動障害を認めない者に比し, 閉眼足踏み試験異常者が多く (p<0.005), 潜在的平衡機能障害が認められ, 振動工具使用による中枢神経症状の存在が示唆された.
  • モヤモヤ病との関係を中心とした考察
    南澤 宏明, 村山 享一, 山中 正信, 漆山 和夫, 赫 彰郎
    1984 年 6 巻 2 号 p. 182-187
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    右側脳室上衣下出血にて発症し, 脳血管写にて両側頚動脈, 椎骨動脈系にはその起始部から異常は認められなかったが, 右中大脳動脈M1部にのみ閉塞像とその周囲でのモヤモヤ様血管網を認めた1例について追跡しえたので報告する.
    本症例は発症後1年を経過しているが, 閉塞部位及びモヤモヤ様血管網の進展をみておらず, モヤモヤ病類似疾患, 更には最近報告されている特発性中大脳動脈閉塞症ともその病態が近似していると考えられたため, これらの疾患との関係について考察を加えた.
  • 小林 逸郎, 大澤 美貴雄, 相川 隆司, 竹宮 敏子, 丸山 勝一
    1984 年 6 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Ataxic hemiparesis (AH), pure motor hemiplegia (PMH) はFisherによりlacunar infarctとして報告されている.我々は原発性橋出血によるAH 2例, PMH 1例を経験した.臨床症状, CT, 眼輪筋反射 (BR), 聴性脳幹反応 (ABR), 電気眼位図 (EOG), 体性感覚誘発電位 (SEP) を検討した.AH, PMHともに病巣側と反対側に小脳症状と軽度の不全片麻痺あるいは中等度の不全片麻痺のみが出現した.AH, PMHともにCT上, 上部橋底部に小出血をみたが, AHの方がPMHより背側に存在した.BRは全例に異常, SEPはAHのみ異常, PMHでは正常.EOG, ABRはAHの1例のみ検討したが異常をみた.これらの異常はすべて回復期には正常となった.急性期における生理学的検査の異常は, 出血そのものによる障害というよりはむしろ, 出血による周囲への圧迫, 浮腫などの間接的な影響により臨床的にはとらえられない微妙な変化を一過性にとらえたものと考えられた.
  • 工藤 寛, 山鳥 重
    1984 年 6 巻 2 号 p. 195-203
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    軽症型視床出血24例 (男18例, 女6例, 平均年齢63歳) について, 臨床症状, CTスキャン, 体性感覚誘発電位 (SEPと略) の経時的変化を検討した.平均3ヵ月のfollow upでは, 瞳孔異常や共同偏視などの眼症状, 及び, 触覚, 温痛覚, 振動覚, 関節位置覚などの感覚障害は, 著明な改善を示したが, 測定障害や振戦などの失調症, 及び, 自発痛などの異常感覚は, むしろ発症時にはみられず, 後になって出現するものが多い.SEPは, CTスキャン上, 高吸収域が消失してからも改善しつづけ, P15, N20, P23の順に出現する.患側の回復SEPに関して, P15及びN20成分の潜時は, 健側コントロール群のSEP成分に比べて変らないが, P23成分の潜時は延長している (N20/P23解離), このような視床出血でピーク間潜時の選択的延長を認めた報告はこれまでにはない.
  • 勝部 知子, 小林 祥泰, 木谷 光博, 山口 修平, 恒松 徳五郎
    1984 年 6 巻 2 号 p. 204-207
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    右脳梁前半部梗塞により一過性起立歩行不能を呈した1例を報告した.本例は, 協調運動にて明らかな小脳性運動失調を認めず, 臥位では両下肢とも随意運動は円滑に行なえたにも関わらず坐位及び起立歩行は不能であった.また左手書字においてのみ失行性失書と思われる症状を示したが, 視覚, 聴覚, 触覚等の各失認や運動及び着衣失行, 失語, 皮質感覚等の皮質症状を認めなかった.起立歩行障害は, 発症数日目より急速に改善した.従来検討されてきた脳梁障害患者の多くは, 脳腫瘍患者や, 手術的脳梁切断例であり, 本例の如くCT上, 脳梁にほぼ限局した急性期脳梗塞と考えられる例で脳梁障害直後より歩行について検討した報告は見られない.Geschwind以来歩行障害は脳梁と関係ないとされてきたが, 本例の如く脳梁障害の急性期には一過性歩行障害を示す場合もあり, 歩行と脳梁前半部との間に何らかの関連がある可能性を否定出来ないと思われる.
  • 植松 大輔
    1984 年 6 巻 2 号 p. 208-215
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は脳軟膜血管と脳実質内血管に対する頚部交感神経刺激の効果を同時に比較することにより神経性調節の範囲を解明することにある.【方法】猫9匹の上頚交感神経節を, 3~8V, 300μsec, 100Hzの条件で5分間電気刺激し, その間videocameraと光電法を併用した新しいsystemで同側の脳軟膜血管口径と局所脳血液量 (CBV) の変化を同時且つ連続的に測定した.【結果】刺激当初は脳軟膜血管の収縮とCBVの減少を認めた.脳軟膜血管の収縮は刺激中持続したが, CBVは79±14秒後より増加し始め, 238±39秒後には刺激中にもかかわらず前値を越えて増加するという二相性の変化を示した.最大収縮は脳軟膜動脈10.7±3.0%, 静脈6.3±2.3%であったが有意差はなかった.【結論】交感神経の血管収縮効果は当初脳軟膜血管はもとより脳実質内血管にも及んだ.escape現象は脳循環のhomeostasisを維持するために脳実質内血管にその後生じた代償性の代謝性血管拡張と考えられた.
  • 中村 信之, 小川 彰, 吉本 高志, 桜井 芳明, 鈴木 二郎
    1984 年 6 巻 2 号 p. 216-222
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    合併症に罹患することなく急性期に重篤となり死亡した内頚動脈系脳梗塞症例について検討を行ない, いかなる脳梗塞症例が死に至るのかを検討した.対象症例は11例で経過中にCT上high density areaを呈した症例を出血性梗塞と定義すると, 貧血性梗塞が8例, 出血性梗塞が3例であった.貧血性梗塞では, 発症早期より重篤な意識障害や運動麻痺を呈し, 脳血管写上頚部ないし頭蓋内内頚動脈閉塞を認めた.また, CT上で前大脳動脈および中大脳動脈あるいは中大脳動脈および後大脳動脈と少なくとも2本以上の主幹動脈領域に, low density areaを認め, 早期に10mm以上の高度なmidline shiftを呈した.また, 発症から死亡までの期間は平均4.9日であった.一方, 出血性梗塞は, 入院時の臨床症状は貧血性梗塞のそれに比べ比較的軽度であったが, 経過中急激に増悪する傾向を認めた.CT上の病変の広がりは, 2例で中大脳動脈に限局されており, 必ずしも2本以上の主幹動脈領域に亘るものではなかった.出血性梗塞の出現によりdiffuseないしmassiveなhigh density areaの出現が認められた.発症から死亡までの期間は平均9.6日であった.
  • 寺田 友昭, 菊池 晴彦, 唐澤 淳, 伊原 郁夫, 永田 泉
    1984 年 6 巻 2 号 p. 223-229
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    脳動脈瘤破裂後の脳血管攣縮患者9人に対して臨床症状出現時, dopamine (6例), angiotensinII (3例) を用いて昇圧を行ない, その時の脳血流量 (CBF), 心機能の変化を調べた.CBFはアルゴン法を用い, 昇圧による変化は酸素動静脈含量較差より求めた.また1例では, Xe-CT-CBFstudyを行なった.dopamine, angiotensin II使用群とも昇圧と共にCBFの増加が認められた.また, Xe-CT-CBFでも攣縮発生部に一致して昇圧に伴うCBFの増加を認めた.これらのことより昇圧によるCBFの増加の原因として, 攣縮部の脳循環自働調節能の破綻が示唆された.心機能の面からは, dopamine投与群では投与量に比例して心拍出量が増加したのに対し, angiotensin II投与群では投与量とともに心拍出量が減少し, 全身血管抵抗が増加した.このことよりangiotensin IIの使用は, 特に心疾患を有する患者に対して慎重でなければならない.
  • 北岡 憲一, 中川 翼, 阿部 弘, 佐藤 正治, 岩隈 勉
    1984 年 6 巻 2 号 p. 230-237
    発行日: 1984/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳動脈瘤術後精神症状を有する49例に対して慢性期に高気圧酸素療法を応用した. (1) OHPの急性効果は著効と中等度改善を合わせて49例中26例 (53%) で, 症状不変は8例 (16%) でOHPの有効性は高かった. (2) OHPの効果は症状の重篤度に左右されておりOHP開始前の症状が軽い程OHPの効果が認められた. (3) 脳動脈瘤部位別では内頚動脈瘤, 中大脳動脈瘤で症状の重篤な例でもOHPにより症状が改善する事が多かった. (4) OHPが有効であった症状は自発性欠如や見当識障害であり, 無効なのは無動性無言症であった. (5) 精神症状が判明した早期よりOHPを開始した例が急性効果が認められ, OHP開始まで3ヵ月以上経てしまった例は効果はほとんど期待できなかった. (6) 自然歴例とOHP例とで症状の遠隔成績を比較すると術後中等度以上の重度精神症状が認められた例ではOHP例の方が成績が優れていた.
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