抄録
内頚動脈の閉塞あるいは狭窄が拍動性耳鳴の原因となることは比較的知られていない.著者らは拍動性耳鳴を訴える2症例を経験し, 1例で同側の内頚動脈の狭窄を, 他の1例で対側の内頚動脈の閉塞を確認した
症例1は56歳の女性で右の拍動性耳鳴を訴え, 右の頚部および眼窩に血管雑音を聴取した.血管造影で右内頚動脈の壁不整と狭窄を認めた.右の耳管狭窄が検出され通気で耳鳴は減少した.
症例2は50歳の男性で左の拍動性耳鳴と左片麻痺を主訴とし, 右内頚動脈起始部および右中大脳動脈の閉塞と, 左内頚動脈よりの側副血行が認められた.左頚部に血管雑音を聴取し運動負荷で血管雑音と耳鳴は増強し安静で減少した.
これらはそれぞれ血管内腔の不整および血流増加により血管雑音・耳鳴を生じたと考えられる.拍動性耳鳴の発現機序およびその修飾因子について考察を加え, 報告した.