抄録
本態性高血圧を基盤していると思われる視床出血 (T群) および被殼出血 (P群) を対象に, 発症後の血圧変動を検討し, 血腫の自律神経系, 視床下部への影響について考察した.
(1) 急性期血圧 (1病日から3病日の平均値) はT群181/106mmHg, P群171/104mmHgであったが, 7病日には急性期に比べ両群とも有意に低下し, 30病日 (慢性期) にはT群140/88mmHg, P群145/89mmHgとなり, その後は安定化した. (2) T群はP群に比べ急性期と慢性期の血圧の差が有意に大きかった. (3) 血腫の大きさでは血圧に差は認められなかった. (4) T群脳室穿破例の血圧は, 急性期, 慢性期とも穿破のない例に比べ高い傾向にあった. (5) T群中ホルネル徴候を有する例では有さない例に比べ, 慢性期血圧が降圧薬投与なしに正常化したものが多かった.以上より, 血腫部位による血圧変動の差は, 血腫の視床下部への影響の違いを反映しているものと考えられた.