脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
妊娠中毒症に合併した特異な脳血管障害の1治験例
今屋 久俊高橋 弘中沢 省三
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 8 巻 2 号 p. 102-107

詳細
抄録

妊娠中毒症から脳卒中発作を続発し, CTで特異な脳血管障害像を呈した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は25歳, 初産婦.妊娠10ヵ月で妊娠中毒症の診断で, 某産院入院.翌日, 頭痛, 嘔吐, 不穏状態が出現し, 右片麻痺を呈し昏睡に陥ったので当科に転院した. CTで両側基底核部の梗塞像と出血像, さらに脳室内出血を認めた. 脳血管写ではdiffuse vasospasmが認められたが, 脳動脈瘤, 脳動静脈奇形などの血管異常は見い出し得なかった.患者は早期治療と集中管理により救命し, 帝王切開で胎児娩出を行い, 母子共に良好な経過をとった.妊娠中毒症に伴う, いわゆる特発性の脳血管障害は, 稀ながら知られている.そのなかには妊娠中毒症による脳血管攣縮が主因となり, 脳浮腫, 脳虚血または脳梗塞をきたすものがある.そこに本症例は妊娠高血圧の増悪などが作用して, 血管破綻性の出血をきたしたものと推察した.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本脳卒中学会
前の記事 次の記事
feedback
Top