ウイルス
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特集1 [第51回ウイルス学会学術集会シンポジウム
「ポストゲノム時代のウイルス学」]
3. HCVワクチン開発のためのCD81の構造生物学的研究
北所 健悟
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2004 年 54 巻 1 号 p. 39-47

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抄録

CD81は, テトラスパニンファミリーに属する細胞表面の抗原の一つであり, C型肝炎ウイルスとの結合が強いことから, C型肝炎ウイルスの感染に関与すると考えられている. CD81分子は, 236個のアミノ酸からなる膜4回貫通型の膜蛋白質であり, 2つの細胞外領域と3つの細胞内ドメインおよび4つの膜貫通疎水性領域から形成されている. このうちCD81の細胞外領域の1つである LEL ドメインは, 91個のアミノ酸からなり, 他のテトラスパニンと同様に2つの S-S 結合を有する. 我々は, ヒトのCD81のウイルス結合ドメインであるLEL (CD81-LEL) のX線構造解析を行い, この立体構造が全く新規なモチーフであることを見出した. また CD81-LEL とHCVウイルスとが相互作用すると思われる部位を同定した. CD81-LELは結晶中でダイマーを形成し, 各々のサブユニットは5本のα-ヘリックスとそれをつなぐループ部分で構成され, stalk と head サブドメインからなる “mushroom-like” の立体構造をとっていた. しかしながら, この各々のサブユニットは立体構造的には少し違った構造を取っており, 活性型と2つの内の1つのS-S結合が還元された不活性型のコンフォメーションを取っていた. HCV の結合に関与するアミノ酸残基は, headサブドメインにある疎水性クラスターに集中しており, これらの側鎖は外側に突出した形で存在し, 結晶内では他の分子とパッキングしていた. 従って, この特徴のある疎水性クラスターが, HCVのエンベロープ糖蛋白質E2の認識部位である可能性が示唆された.

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© 2004 日本ウイルス学会
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