ウイルス
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日本脳炎ワクチン問題
マウス脳由来不活化日本脳炎ワクチンの評価
倉根 一郎
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2005 年 55 巻 2 号 p. 307-312

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抄録

 日本脳炎は日本脳炎ウイルスの感染によって起こる急性脳炎である.脳炎を発症した場合,約20%の患者は死亡,約50%は精神神経に後遺症を残す重篤な疾患である.日本において1960年代1000人以上であった患者数は激減し,1990年以降は10人以下の患者発生である.このような患者数の減少にマウス脳由来不活化日本脳炎ワクチンが果たした役割は非常に大きなものがある.平成17年,日本脳炎ワクチン接種との因果関係が否定できない健康被害(急性散在性脳脊髄炎,(Acute Disseminated Encephalomyelitis,ADEM))の発生により,厚生労働省より「日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて」の勧告がなされた.本勧告は行政的判断によるものであり,科学的にマウス脳由来日本脳炎ワクチンと急性散在性脳脊髄炎の因果関係が科学的に証明されたことによるものではない.現在,組織培養細胞由来日本脳炎ワクチンの開発が進んでいるが,早期の実用化による積極的勧奨の再開が待たれている.

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© 2005 日本ウイルス学会
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