ウイルス
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特集:最近話題のウイルス
ウエストナイル熱・脳炎
高崎 智彦
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2007 年 57 巻 2 号 p. 199-206

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抄録
 ウエストナイルウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスで,蚊によって媒介される.1937年にアフリカ・ウガンダで発熱患者から発見され,1999年には米国で初めて患者が報告された.ヒトにおける病態は,非致死性の急性熱性疾患であるウエストナイル熱と脳炎,髄膜炎,脊髄炎などの中枢神経系の症状を呈するウエストナイル脳炎がある.北米での主たる媒介蚊は,アカイエカ(Culex. pallens),ネッタイイエカ(Cx. quiquefasciatus),Cx. restuans, Cx salnarius, Cx. talsalisなどイエカ属のカであるが,媒介可能なカは60種以上である.米国での患者数は,1999年以降2007年までに27000人以上であり,カナダでの患者数も2002年以降,4600人以上の患者が報告されている.日本においても2005年9月に米国渡航者によるWN熱の輸入症例が初めて確認された.北米のウエストナイルウイルスは,依然として強い病原性を示しているが,2003年のテキサスとメキシコでの分離株の中には,弱毒株が存在することが報告されている.ウエストナイルワクチンの開発状況はヒト用のワクチンは開発中でまだ実用段階にはない.ウマ用のワクチンは,不活化ワクチンが2001年から使用され,DNAワクチン,キメラ生ワクチン,レコンビナントワクチンも認可されている.
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© 2007 日本ウイルス学会
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