抄録
HTLV-1関連脊髄症(HAM)は,ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染者の一部に発症する神経難病である.HTLV-1はTリンパ球を宿主細胞とするレトロウイルスで,感染者の多くは無症候性キャリアのまま生涯をおくるが,感染者の一部にHAMや成人T細胞白血病リンパ腫(Adult T cell leukemia/lymphoma : ATL)などの重篤な疾患を起こすという特徴をもつ.本稿では,HTLV-1のウイルス学的特徴やHAMの疾患概要,最近のHAMの分子レベルの基礎研究から得た病態解明研究やバイオマーカー研究の成果を紹介し,それを踏まえた新薬開発,疾患活動性に応じた治療アルゴリズム策定などの最新情報,また今後の展望について概説する.