ウイルス
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総説
  • ~感染性ヒトロタウイルスの人工合成~
    河本 聡志, 福田 佐織
    2019 年 69 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
     ロタウイルスは,乳幼児嘔吐下痢症の病因ウイルスである.1990年にロタウイルスの全ゲノム塩基配列が初めて決定されて以来,ヒトロタウイルスの人工合成を最終目標とする遺伝子操作系(リバースジェネティクス系)の開発は,ロタウイルス研究者の長年の念願であった.2006年にようやく,ヘルパーウイルスを用いて11本のゲノム分節のうち1本がcDNAに由来する組換えロタウイルスを作製できるリバースジェネティクス系が初めて開発された.その後10年かかって2017年,ロタウイルスゲノムをコードする11本のT7プラスミドに加えて,細胞融合性蛋白質等を発現するヘルパープラスミド3本を合わせた計14本を細胞に導入することで,動物(サル)ロタウイルスにおける完全なリバースジェネティクス系が実現した.次いで,11本のウイルス遺伝子のうち,2種類の遺伝子(非構造蛋白質NSP2とNSP5)を他の9本の遺伝子の3倍量として細胞に導入することで,最少因子(ロタウイルスゲノムをコードするT7プラスミド)のみから,しかも高効率にロタウイルスを人工合成することを可能とするリバースジェネティクス系(11-plasmid system)が確立された.一方で,最も重要なヒトロタウイルスは増殖能がきわめて低く,依然としてリバースジェネティクス系の開発は困難であったが,今年(2019年),当研究室において,11-plasmid systemとロタウイルス患者下痢便中のウイルスを効率良く分離する技術(高濃度のトリプシン添加と回転培養)とを利用することで,世界初となる,感染性ヒトロタウイルスの人工合成を報告した.本稿では,ロタウイルス研究者の宿願であった,ヒトロタウイルスの人工合成に至るまでの背景,そして今後の展望を紹介したい.
  • 木村 宏, 奥野 友介
    2019 年 69 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
     Epstein-Barr virus (EBV)はヘルペスウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスである.腫瘍ウイルスであるEBVは様々なリンパ系腫瘍と関連しており,そのリンパ腫原性については,MYCの転座・活性化など,Burkittリンパ腫を中心に広範な研究がなされてきた.しかしながら,Burkittリンパ腫以外のリンパ系腫瘍については,レセプターや宿主遺伝子の役割を含め,腫瘍化メカニズムについて不明な点が多く,その全貌は明らかとなっていない.近年,我々はEBV関連リンパ腫で,高率に欠損ウイルスが認められること,ウイルス複製に関わる遺伝子を欠損した場合にリンパ腫形成能が増すことをマウスモデルで示し,報告した.これまでも他の腫瘍ウイルスの遺伝子変異について多くの報告があるが,EBVのように70以上の遺伝子を有する大型ウイルスでの遺伝子欠失の成り立ちと意義については,未だ不明な点が多い.本稿では,欠失EBVを含めた最近の知見を中心に,EBVのリンパ腫原性について概説する.
特集:HTLV-1
  • 〜レトロウイルスHTLV-1とヒトゲノムの相互作用に関する最近の話題〜
    松尾 美沙希, 宮里 パオラ, 佐藤 賢文
    2019 年 69 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
     レトロウイルスがウイルスゲノムを宿主細胞ゲノムに組み込むことで形成されるプロウイルスDNAはウイルスの持続感染状態,病原性発現機序を考える上で極めて重要なポイントとなる.実際に,HTLV-1感染症の臨床におけるATLの診断で,プロウイルスによるクローン性増殖評価検査が行われている.近年,DNA解析手法の中心がサザンブロット法からやPCR法へ移り,さらにはDNAシークエンス技術の発達によって,ウイルスの組み込み部位の解析精度が年々向上し,感染細胞の動態をより正確に把握することが可能になってきている.  一方でヒトゲノム研究も次世代シークエンス技術の登場により飛躍的進歩をみせており,ヒトゲノム情報がA, T, G, Cといった塩基配列の1次元的情報から,ヒストン修飾やクロマチン構造など2次元的な構成へと理解が進み,さらに高次クロマチン構造や核内構造といった3次元的な構成レベルでヒトゲノムを捉えることが可能になってきた.それに従い,ウイルス組み込み部位と宿主ゲノムとの関わり方も,塩基配列上の1次元的な位置情報に留まらず,2次元的,3次元的視点でその関係性が明らかになりつつある.
  • 山野 嘉久
    2019 年 69 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
     HTLV-1関連脊髄症(HAM)は,ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染者の一部に発症する神経難病である.HTLV-1はTリンパ球を宿主細胞とするレトロウイルスで,感染者の多くは無症候性キャリアのまま生涯をおくるが,感染者の一部にHAMや成人T細胞白血病リンパ腫(Adult T cell leukemia/lymphoma : ATL)などの重篤な疾患を起こすという特徴をもつ.本稿では,HTLV-1のウイルス学的特徴やHAMの疾患概要,最近のHAMの分子レベルの基礎研究から得た病態解明研究やバイオマーカー研究の成果を紹介し,それを踏まえた新薬開発,疾患活動性に応じた治療アルゴリズム策定などの最新情報,また今後の展望について概説する.
  • 豊田 康祐, 安永 純一朗, 松岡 雅雄
    2019 年 69 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
     ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)はヒトレトロウイルスとして世界で初めて同定され,予後不良な造血器悪性腫瘍である成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)の他,HTLV-1関連脊髄症やHTLV-1ブドウ膜炎などの種々の炎症性疾患を引き起こす.HTLV-1は生きた感染細胞を介してのみ感染するというウイルス学的特徴を有しており,HTLV-1 bZIP factor(HBZ)やtaxに代表される複数のウイルス遺伝子を巧みに利用しながら,次の個体へとその感染を拡大している.感染の成立後,HTLV-1は感染細胞を増殖・不死化させるとともに,その免疫形質を変容させ,宿主免疫監視機構からの逃避を誘導する.その結果,HTLV-1の戦略の行き過ぎた副産物として,一部の感染者では過剰な炎症・腫瘍化が引き起こされ,HTLV-1関連疾患を発症する.本稿ではHTLV-1の調節遺伝子とその巧妙な制御機構に焦点を当て,最新の知見を交えて概説する.
トピックス
  • 池田 素子
    2019 年 69 巻 1 号 p. 47-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
  • 竹田 誠
    2019 年 69 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
     宿主プロテアーゼの局在と,ウイルス膜融合タンパクのプロテアーゼに対する基質としての特異性が,ウイルスの細胞や臓器トロピズム,そしてウイルス病原性の重大な決定因子になっている.この宿主プロテアーゼ依存性ウイルストロピズムの解明は,1970年代の本間らの宿主依存性修飾という現象の解明に始まり,タンパク質解析技術の導入とともに,それがウイルス膜融合タンパクの開裂による活性化で説明ができること,そして,核酸解析技術の導入によってプロテアーゼに対する感受性の違いを決定するウイルス側の分子生物学的要因が次々と明らかになった.例えば,高病原性鳥インフルエンザウイルスなど,ウイルス膜融合タンパクの開裂部位にmulti-basicモチーフを持つウイルスは,真核細胞が普遍的に持つフーリンで開裂活性化するため,全身の臓器で増殖するポテンシャルを持ち高い病原性を発揮する.一方,通常の低病原性鳥インフルエンザウイルスなど開裂部位の配列がmono-basicな場合には,ウイルスの増殖部位に局在する特定のプロテアーゼで開裂活性化されると考えられる.ただし,そのプロテアーゼは長年未同定のままであった.数多くの候補プロテアーゼがリストアップされる中,近年,遺伝子改変マウスを用いてII型膜貫通型セリンプロテアーゼの一つTMPRSS2が,mono-basicなHAを持つインフルエンザウイルスの生体内活性化プロテアーゼであることが明らかになった.さらに,重篤な新興呼吸器感染症を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルスや中東呼吸器症候群コロナウイルスの生体内での増殖にも,TMPRSS2が関与していることが明らかになった.
平成30年杉浦賞論文
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