ウイルス
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特集:HTLV-1
HTLV-1感染細胞クローン選択におけるウイルス組み込み部位の意義
〜レトロウイルスHTLV-1とヒトゲノムの相互作用に関する最近の話題〜
松尾 美沙希宮里 パオラ佐藤 賢文
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2019 年 69 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

 レトロウイルスがウイルスゲノムを宿主細胞ゲノムに組み込むことで形成されるプロウイルスDNAはウイルスの持続感染状態,病原性発現機序を考える上で極めて重要なポイントとなる.実際に,HTLV-1感染症の臨床におけるATLの診断で,プロウイルスによるクローン性増殖評価検査が行われている.近年,DNA解析手法の中心がサザンブロット法からやPCR法へ移り,さらにはDNAシークエンス技術の発達によって,ウイルスの組み込み部位の解析精度が年々向上し,感染細胞の動態をより正確に把握することが可能になってきている.  一方でヒトゲノム研究も次世代シークエンス技術の登場により飛躍的進歩をみせており,ヒトゲノム情報がA, T, G, Cといった塩基配列の1次元的情報から,ヒストン修飾やクロマチン構造など2次元的な構成へと理解が進み,さらに高次クロマチン構造や核内構造といった3次元的な構成レベルでヒトゲノムを捉えることが可能になってきた.それに従い,ウイルス組み込み部位と宿主ゲノムとの関わり方も,塩基配列上の1次元的な位置情報に留まらず,2次元的,3次元的視点でその関係性が明らかになりつつある.

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