抄録
エボラウイルス感染症など,アフリカにはさまざまなウイルス性出血熱が存在しており,その高い致死率から公衆衛生的な脅威となっている.自然宿主がヒトでないためウイルスの根絶を目指すことは難しく,予防や治療法の確立は早急の課題であると同時に,ヒトでの感染制御やワン・ヘルスの概念を含めた公衆衛生的な対策の重要性も高い.また,公衆衛生的な対策と疫学的な知見の蓄積は表裏一体でもある.私は世界保健機関の感染症コンサルタントして国際保健活動に関わっており,実際にアフリカに赴き,公衆衛生活動の一環として診療ガイドラインの作成,検査体制の構築,感染制御の指導,対策予算案の作成,疫学データの解析などをこれまでに行ってきた.疫学的な解析により,2014~2015年のエボラウイルス感染症や2018~2019年のラッサ熱アウトブレイクにおける流行状況を報告し,疾病罹患や死亡の疫学的危険因子を明らかにした.