抄録
Bウイルスは,マカク属サルを宿主とするヘルペスウイルスである.ヒトに感染すると非常に強い神経病原性を示す.これまでの患者報告は,北米及び英国のマカク属サルを用いた研究従事者及び飼育者に限定されており,稀な感染症と言える.1997年以降,その患者報告は途絶えていたが,2019年に日本で,また2021年に中国でそれぞれ初となるBウイルス病患者が報告された.20年以上報告がなかったBウイルス病であるが,その潜在的脅威はずっと存在していたことになる.Bウイルスが示す,ヒトへの強い神経病原性に関わるウイルス因子はほとんど明らかになっていない. また,野生のマカク属サルとの接触による感染の報告は未だ無いが,その可能性は否定されていない.本稿では,そのウイルス学的性状,患者報告例から得られたBウイルス病に関する知見及びBウイルスの遺伝子型に関して述べる.