ウイルス
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総説
BSL-4 施設稼働により拓かれるわが国のウイルス研究の新局面
安田 二朗
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2022 年 72 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

 エボラウイルス病,マールブルグ病,ラッサ熱,クリミア・コンゴ出血熱,南米出血熱は極めて致死性が高いウイルス性出血熱であり,わが国で一類感染症に指定されている.これらの感染症に対する効果的なワクチンや治療薬は現在も尚数えるほどしか存在せず,その効果も限定的である.これらの感染症の原因ウイルスはBSL-4に分類されており,ワクチンや治療薬等の開発や病態解析等に必須である感染実験を行うにはBSL-4施設が必要である.しかしながら,わが国には,これまで平時からBSL-4病原体を用いた実験を行うことができるBSL-4施設は整備されておらず,研究開発を進める上で大きな障壁となっていた.このような状況を打開すべく,長崎大学医学部キャンパスに2021年7月末BSL-4施設が竣工した.今後,厚生労働大臣によるBSL-4施設の指定を受け,特定一種病原体等を搬入した後,全国の研究者が平時から基礎・応用研究に利用することができるわが国初のBSL-4施設として,いよいよ本格稼働することになる.本稿では,施設設置の経緯と施設の概要,そして今後への期待を記す.

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