抄録
レオウイルス科のウイルスは9~12分節に分かれた二本鎖RNAをゲノムとして有しており,乳幼児のウイルス性下痢症の原因ウイルスとして重要なロタウイルスをはじめ,哺乳類,鳥類,両生類,魚類,爬虫類,昆虫,植物,菌類等,広範な宿主に感染する多様なウイルス種が含まれる.レオウイルス科において組換えウイルスの人工合成技術であるリバースジェネティクス系の確立は,そのゲノム構造の複雑性から他のウイルス科に比べ遅れていた.しかし,哺乳類オルソレオウイルスの完全なリバースジェネティクス系が2007年に確立されると,それに次いでブルータングウイルス,ロタウイルス等,公衆衛生上重要なウイルスのリバースジェネティクス系が確立された.最近ではレオウイルス科で最多の12分節ゲノムを持つコルチウイルス属のリバースジェネティクス系についても確立されたことでレオウイルス科の研究において新たな展開が期待される.本稿ではレオウイルス科のリバースジェネティクス系の原理とその応用について概説する.