ウイルス
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2021年度杉浦奨励賞論文
実地・実験・理論にもとづくウイルス感染症の包括的理解
古瀬 祐気
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2022 年 72 巻 1 号 p. 87-92

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抄録
 感染症はいまなお人類の公衆衛生上の脅威であり,特にウイルス感染症に関しては病態や疫学など不明な点が多いのが現状である.私は,これまで医師・基礎研究者・行政アドバイザーなどさまざまな立場に身を置きこの問題を扱ってきた.基礎研究に関しては,特にインフルエンザウイルスをはじめとする呼吸器ウイルスの感染伝播ダイナミクスや遺伝子変異の解析を通じて,ウイルス感染症のヒト集団における実態を定量的に把握するためのマクロな理論研究や,細胞内におけるウイルスの生活環や病原性のメカニズムを明らかにするためのミクロな分子生物学研究を行っている.また,エボラウイルス感染症やラッサ熱のアウトブレイク時にはWHOの感染症コンサルタントとして現地で感染症対策に当たったり,2020年2月からは厚生労働省のクラスター対策班参与として新型コロナウイルス感染症の疫学調査や統計解析に携わるなどして,感染拡大を制御するための公衆衛生的なアドバイスを行政組織に対して学術的な見地から行っている.臨床ウイルス学・疫学・数理生物学・進化学・遺伝学・分子生物学を統合させた学際的な研究を行うことでウイルス感染症の統合的な理解を目指しており,研究によって得られた知見や成果を現場へと還元し最終的にはウイルス感染症の制御に資することを目標としている.
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