ウイルス
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特集 : 麻疹について
麻疹ウイルス
關 文緒竹田 誠
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2025 年 75 巻 1 号 p. 13-22

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抄録
麻疹ウイルスは麻疹の病原体であり,強い感染力をもつ.免疫細胞に発現するSignaling lymphocytic activation moleculeと,上皮細胞に発現するnectin-4の両方の受容体を使用し,このことが麻疹の病態と強く関係している.世界的には小児死亡の主要な原因ウイルスであるが,非常に有効な弱毒生ワクチンが存在することにより麻疹排除が進められている.各国の麻疹排除により麻疹ウイルス野外株の遺伝子型は,近年B3とD8の2種類に減少した.このため,麻疹発生ケースの関連や追跡のために従来から用いられているN遺伝子の450塩基による遺伝子型分類に加えて,全ゲノム配列やM-F遺伝子間の非翻訳領域を利用する新規手法が試されている. 麻疹ウイルスは単一血清型であるが,遺伝子型間にはゲノム上の配列の違いがあり,B細胞エピトープやT細胞エピトープに差が見られるが,現在の弱毒生ワクチンは全ての遺伝子型に対して十分に有効である.一方で,ワクチンによる防御免疫は,自然感染による防御免疫と異なり時間により減衰していくため,ワクチン接種者における防御免疫の維持は今後,麻疹制御のために重要である.
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© 2025 日本ウイルス学会
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