抄録
2025年は世界各地で麻疹のアウトブレイクが発生しており,日本においても2025年5月現在,COVID-19パンデミック以降では最多の報告数となっている.未接種未罹患の麻疹は感染力が強く,重症化のリスクも高いことから,1歳になったらすぐのMRワクチンの接種が重要である.また,6歳になる年度の第2期定期接種率を95%以上に上げる必要がある.小学生以上では,1歳以上で2回の麻疹含有ワクチンの接種記録を平時に確認しておくことが大切である.1990年4月2日以降に生まれた人は,2回の定期接種の機会があったが,受けているかどうかは記録で確認する.海外渡航前には1歳以上で2回の麻疹含有ワクチン接種記録を確認することが望まれる.また,一人でも麻疹患者が発生したら迅速な積極的疫学調査を実施し,麻疹に対する免疫を持たない感受性のある曝露者には,曝露後72時間以内の緊急ワクチン接種を実施することで発症予防の可能性がある.ただし,ワクチン接種不適当者に対しては曝露後6日以内の人免疫グロブリン製剤の筋注による重症化予防が健康保険適用されている.最も重要なことは,麻疹ウイルスに曝露する前の予防である.