抄録
我々は, 麻疹ウイルスに対する細胞レセプターが, リンパ球の活性化に関与する膜蛋白SLAM (CD150) であることを明らかにした. SLAMは, 活性化されたリンパ球, 活性化された単球, 成熟樹状細胞に発現している. 麻疹患者体内のウイルスはSLAMをレセプターとして使っており, ワクチン株のレセプターとして以前同定されていたCD46を使うものは検出できなかった. さらに麻疹ウイルスと同じモルビリウイルス属に属するイヌジステンパーウイルス, 牛疫ウイルスもそれぞれイヌ, ウシのSLAMを用いて細胞に感染することが分かった. したがって, SLAMはモルビリウイルス全般に対するレセプターと考えられる. SLAMが麻疹ウイルスレセプターとして同定されたことにより, 麻疹の感染や免疫抑制機構の理解が進むとともに, 動物モデルの開発に道が開かれた.