抄録
我々はこれまでにニワトリにおいて,心房性および心室性期外収縮を中心とする自然発生性不整脈に関して,ロードアイランドレッド種(RIR)が他の鶏種に比べて有意に高い発生率を示すことを見いだした。一方,各種動物においてビタミンB1(VB1)欠乏の際には不整脈の発生が見られることが知られている。また,RIRは他の鶏種と比べてVB1欠乏に対する感受性が高いとされていることから,RIRにおける不整脈の好発性がRIRのVB1欠乏に対する高感受性に関わっているか否かを検討する目的で,孵化後30日のRIRと白色レグホン種(WL)の雛20羽ずつにVB1欠乏飼料を,対照群としてそれぞれ10羽にVB1含有配合飼料を与え,その際に発生する不整脈について17日間にわたって詳細な心電図学的検索を行った。実験期間中,RIR,WLともに対照群の心拍数は約450/分でほぼ一定しており,不整脈および心電図波形の異常は全く認められなかった。一方,VB1欠乏群の心拍数は漸次低下する傾向を示した。そして,RIR8羽およびWL4羽に4種類の不整脈が見出され[洞性徐脈(RIR:2羽;WL:3羽),洞房ブロック(1;0),洞停止(3;0),洞性不整脈(2;1)],さらにRJR,WLそれぞれ6羽に心電図波形の異常が認められた[T波の変形(5;3),S-Tの上昇あるいは下降(1;3)]。これらの不整脈および心電図波形の異常の発生率についてVB1欠乏群は対照群よりも有意に高かったが(p<0.001),VB1欠乏群のRIRとWLの間に有意な差は認められなかった。
以上の結果から,RIRにおける不整脈の好発性には,RIRのVB1欠乏に対する高感受性が直接関わっていた可能性は低いものと考えられた。