抄録
犬における超音波パルスドプラ波形の形状的特徴を知る目的から,2歳以下の健常犬35頭を用い,左右心室の流入路および流出路の血流ドプラ波形の計測を行った。流入路波形に関しては7種,流出路波形に関しては3種の計測を行い,その計測値を処理し,合成波形を得た。その結果,左室流入路の血流速波形はM型を示し,拡張前期の第1ピークは常に後期の第2ピークより高い峰を形成した。左室流出路の血流速波形はVおよびレ字の中間型を示し,ピークは収縮期前期に位置した。右室流入路の血流速波形はM字型であったが第1,第2ピークの波高ならびにその高低差も少なく,波形ピークの逆転率も40%に見られた。右室流出路の血流速波形はV字型となった。そのピークは,収縮前期から中期に位置した。この結果,犬におけるドプラ波形の形状は,ヒトのドプラ波形の形状とほほ同じであることが判明した。このことは,超音波ドプラ法を小動物に応用するに際して,すでに医学で報告されている心機能評価への応用が,犬でも可能であることが示唆された。